文:利岡裕子
●みなさん、ご無事ですか?
3月11日、私はテレビに釘づけになっていました。画面に映し出される津波の猛威に、それが現実のことと受け止められず、「うそでしょう?」とつぶやいたまま、ただ、ただ息を飲んでみていました。
この瞬間に、犬たちがどうなったか、真っ先に心配した人はいたのでしょうか?
茫然自失の私には、残念ながら思い至りませんでした。
そんな私の横っ面をはり倒すような1通のメールが、その夜、届きました。
「みなさん、ご無事ですか?」
それは私が認定を受けた団体の、家庭犬しつけインストラクターのメーリングリストで、リーダー格の栃木県のK獣医師から送られてきたメールでした。
電気が回復してすぐに、K獣医師は真っ先に全国の仲間の安否確認を、そして被災したペットたちの現状を気づかっていました。
私は、ハッとしました。
まがりなりにも犬のしつけ指導員を仕事としている自分が、こんなときに役に立てなくてどうする?K獣医師のメールは、自分の生かすべく能力を思い出させる力がありました。
「被災ペットたちを助けなければ」。
今思い起こせば、K獣医師のメールで感化された私は、あきれるほど尊大な思いに駆り立てられていました。
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