犬界の巨星墜つ 犬の碩学 原田知明氏逝く
2019年7月21日更新
本年4月20日、本協会の理事長を12年余りにわたって務め、KCジャパンの基礎を築いた原田知明先生が泉下の客となられた。「犬の研究」、「ドッグ・ジャーナル」、「愛犬の友」、「ドッグ・タイムズ」などでの執筆・編集活動は、これまでの犬界を変革した偉大な功績と思われる。
原田知明先生は、犬界にジャーナリズム、批評精神という、一つの分野が発展・進歩するために必要不可欠な「魂」というべきものを注入したと言っても過言ではないであろう。原田先生以前にも、生物学的、動物学的、繁殖学的など実学的な面で研究成果を発表した先達も数多くいたであろうが、犬界に対してひとつの見識をもって臨み、その現場に留まれた人はいない。
原田先生は犬界の碩学、犬界の生き字引と言われていたけれども、先生は犬についての知識を誰よりも備えていたから偉大な先駆者だったのではない。犬界に教養と美意識とジャーナリズムを持ち込み、社会的にも犬の世界、そして犬を取り巻く愛犬家の世界を向上させたからこそ偉大な人だったのである。
原田先生が犬の世界に入られて、「軍用犬・使役犬の時代」から、本協会の会報誌名「パートナー犬」をみてもわかるとおり(この誌名を名付けたのも原田先生だ)、「家族の一員・パートナーの時代」へと移り変わることができた。
だからこそ今、犬に対するジャーナリズム(その出発点には犬への愛情があるのは自明の理である)が要求される。原田知明先生の遺産を、私たちはきちんと受け継ぎ発展させることができるか? 今、それが問われている。
原田知明先生の安らかなる眠りをお祈りいたします。
1929年5月12日横浜に生まれる。物心ついた頃から犬に親しみ、中学時代にシェパード犬を飼育、訓練して軍犬候補試験に合格。以来、シェパード犬の研究に没頭、「犬がすべて」という青春時代を過ごした。社団法人日本シェパード犬協会(JSV)に勤務後、月刊誌「犬の研究」、「ドッグ・ジャーナル」編集長、「愛犬の友」編集次長、犬界紙「ドッグ・タイムズ」主幹、JKC専務理事、JKC「家庭犬」編集長を歴任。1973年10月26日ザ・ケネルクラブ・オブ・ジャパン(KCJ)を創立。執行副委員長、事務局長を経て、1981年3月2日社団法人となった日本社会福祉愛犬協会(KCJ)において、1986年10月より1998年6月まで理事長を務める。名誉顧問、名誉会員。犬の評論や著作多数で、昭和の犬界史の生き字引と言われた。