PART1(27)犬と楽しく外出しましょう

先ごろ読者の方から、「フレキシブル・リードの危険性」について、とても貴重なご意見をいただきました。
そこで今回はフレキシブル・リードと同様、使い方をまちがえると事故となりやすい、ロングリードや訓練用のカラーも含めた、リードとカラーの正しい使い方についてご紹介したいと思います。

特に最近は、ペットショップやインターネットや通信販売誌で、使用上の注意を守らなければ事故につながるこれらが手軽に購入できるようになってきました。あなたの愛犬が使用しているリードとカラーは、正しい使い方をしていますか?事故が起きない使い方をしていますか?あなたも愛犬も周りの人々もペットたちも、安全にそして安心して散歩ができるよう、もう一度、確認してみましょう。

● 他犬のフレキシブル・リードで怪我をしたMさんの事例

まずは、特集のきっかけとなったMさんからのメールの一部を抜粋してご紹介します。
「このたび犬を飼っておられる方々に知っていただきたいことがあり、メールをさせていただきました。(中略)自分の飼っている犬を散歩させている途中、フレキシブル・リードにつながれた犬がうちの犬を追っかけようとして、突然後方から走り寄り、そのリード(ワイヤー)が私の足にすれて、足が切れてしまいました」
Mさんは、さらにこう書いています。
「このようなケースはほんの一例のようで、私の身近でも「犬がひっかけてけがをした」とか「飼い主自身が指を切った」などという話をきいています。」

● フレキシブル・リードで不安になる事例

実は当協会でも「交差点で犬だけ先に道に出てしまい、歩行者も運転する人間にとっても不安」「夜の公園で出会ったときは、放し飼いに見えて怖くなる」「道を横幅いっぱいのばしていると、自転車などからはワイヤーが見えにくく困る」など、フレキシブル・リードの犬による「ヒヤリハット」体験をしている者が大勢います。

私自身も、フレキシブル・リードを使用している犬に対する安全性の心配がつきません。何よりも、いきなり長いリードを引っ張ってしまう(飼い主は引っ張られてしまうと言いますが)ため、犬の首にかなり大きな衝撃がきます。これは犬の攻撃性を高めることにつながるだけでなく、首の骨の損傷、脳への打撃など健康面での不安を感じてしまいます。またリードが長い分犬は自由がきくので、拾い食いによって命を落とす可能性も高く、そしてMさんが体験したような、お行儀の悪い犬と社会性のない飼い主による危害で、私と愛犬が事故に巻き込まれないかとハラハラしてしまいます。あなたは、いかがでしょうか?

● フレキシブルリードとは?

隣のブルーのリードは1・8メートルです。それにくらべ、かなり長くなっています。写真は体重3キロまでの小さな犬用の紐タイプのもの。

最長8メートル前後までリードが伸びるタイプが多く、手元のストッパーを押すと、リードが伸びたり、縮んだり、同じ長さをキープできたりと自由に調整できます。そのため、うんと遠くまで自由に愛犬を走らせることができます。運動量をたくさん必要とする犬に向いていますが、体重が重い犬の場合リードが長い分引っ張られたときの衝撃が強く、あなたが体を持っていかれてしまうのなら、絶対に使用するべきではありません。

犬の体重に応じたタイプを選ぶことが大切で、そうでないとスピードに伴う負荷の衝撃によってリードが切れてしまいます。

リードの素材はワイヤー、紐、ナイロンなど、犬の体重や運動量で色々あります。犬を暴走・脱走させないよう、愛犬の適性タイプを選びましょう。


● フレキシブル・リードの正しい使い方

Mさんのメールには、次のような使い方をしてほしいと書いてあります。抜粋してご紹介します。

「周りに人や他の犬がいない広い場所で使うようにするなど、飼い主がフレキシブル・リードの危険性を認識した上で、責任をもって利用するべきだと思います。特によく走る元気なわんちゃんがビューッと伸びて自由のきくワイヤータイプのフレキシブルを使うと、凶器になります」と。その通りだと思います。あなたは犬の飼い主としての社会性を身につけていますか?

1・ 公道では、普通のリードで歩きます。
2・ 公園など広い場所に来たら、他人や他の犬の迷惑にならないか確認してからフレキシブル・リードに付け替えて使用します。
3・ 愛犬が走り出してからリードをのばすと、スピードがあるためリードに触れたら人も犬も怪我をします。歩いているときに、少しづつ伸ばしてやります。
4・ 愛犬が走り出したとき、リードは伸ばさずその長さを維持しながら、愛犬が落ち着くのを待ち、落ち着いてからリードを伸ばしてやります。
5・ 愛犬に引っ張られないよういっしょに走り、愛犬の首に衝撃が加わらないように使います。
6・ リードであなたや愛犬が足をひっかけないよう、常に気をつけて使用します。


● ロングリードとは?

ロングリードで愛犬と遊ぶと、一般のリードを使うよりはるかに運動量があり、遊びもワイルドにできます。活発な犬には、必需品かもしれません。


隣のブルーのリードは1・8メートルのもの。それに比べ、ずいぶん長いリードです。
6メートル前後あります。素材は綿やナイロン製が主流です。


● 安全な使い方
ロングリードは、犬と一緒に歩くときに使うものではありません。犬と遊ぶとき、走らせるとき、「おいで」や「まて」のトレーニングをするときに犬をコントロールしながら、主に犬を動かすときに使う道具として重宝します。

ただその名のとおりとても長いため、リードがからんで犬も人も転ぶことがあります。またいきなり犬が走り出したら、リードによって手がすれたり、摩擦でやけどをしたり、人が転倒する危険があります。また犬の首に思わぬ衝撃を与えて骨を損傷する危険などもあります。

フレキシブル・リードとちがい、長さを調節するには手で直接リードを手繰り寄せたり伸ばしたりしながら使うため、飼い主のリードさばきの技が必要です。でもだからこそ、ロングリードの扱いに慣れたら、むしろフレキシブル・リードより安全で、使いやすい道具となります。

このほかボール遊びを愛犬とするときに、ロングリードで愛犬を係留して、遠くまで走ってボールを持ってこさせるときにも重宝します。ただし、リードの長さ分以上の距離までボールを投げると、犬の首に深刻なダメージを与える危険がありますから、その点を注意しながら使ってください。使い方はホームページの(26)にもご紹介してあります。参考にご覧下さい。


● どんなに犬の体にやさしい訓練用の道具でも使い方によっては、危険な道具となります

1・ ジェントル・リーダー
平野もっくん


2・ プレミア・カラー
岡本ハル君

3・ イージーウオーク・ハーネス
佐々木まいちゃん

これらはみな私の教室で使用している、一般の飼い主でも簡単に使用でき、しかも犬に苦痛が少ない、訓練用のヘッドカラーとカラーとハーネスです。とはいえ犬に「リードを引っ張らないで歩くこと」を教えて、実際に散歩でそのように歩くことをしなければ、毛がすれたり、ちっとも効果がなかったり、犬が苦痛を感じたりしてしまいます。

それどころか正しい装着、正しい使い方をしなければ、犬の首に衝撃を与えたり、脇を締め付けすぎたり、脱落したりと、とても危険な道具にもなりかねないものです。

なお上記にあげた道具類だけでなく、使い方が難しい、たとえば犬にとって苦痛が強いチョークチェーンタイプのカラーなど、今、日本で手に入る訓練用のカラーのすべては、下記の注意を守って、道具に応じた正しい使い方をしなければなりません。

注意1・ 引っ張りを予防すると称されているすべての訓練用のカラーなどの道具は、犬だけで係留するときははずして、一般のカラーにつけかえなければなりません。

注意2・ ドッグスポーツ、激しく動く、走る、遊ぶときなどは、一般のカラーにつけかえてから行うべきです。

注意3・ 「リードを引っ張らないで歩行する」ことを犬に教えなければ、使用する資格はありません。

注意4・ ドッグトレーナーやインストラクターのアドバイスを受けて、歩行練習をしながら使用すべきで